八戸のスーパー 男性が心肺停止 切れ目なき処置 命救う(上) (2015/08/16)
救命のリレーによって一人の命が救われた(写真はコラージュ)
救命のリレーによって一人の命が救われた(写真はコラージュ)
■ 緊迫の現場再現
 真夏の暑さが続いていた2013年8月8日。八戸市の久保功さん(71)は心筋梗塞を起こし、市内のスーパーで倒れた。心肺が停止し、生死の境をさまよった。久保さんを救ったのは、その場に居合わせた市民による迅速な応急処置と自動体外式除細動器(AED)だ。九死に一生を得た緊迫した救命の様子を、関係者の証言を基に振り返る。

 この日午後、久保さんは夏休みで帰省していた次女と孫を連れ、八戸市の生協コープあおもり類家店へ車で買い物に向かった。店の入り口に着いたとき、久保さんは崩れ落ちるように倒れた。
 午後3時49分、八戸消防本部に「店内で買い物客が倒れている」との通報が入った。例年より暑い日が続いて熱中症患者が相次ぎ、店から車で数分の距離にある八戸消防署の救急車は出動中だった。3時51分、代わって同市北白山台の根城救急隊が出動した。
 「倒れている人がいる」。店の出入り口付近のサービスカウンターで作業をしていた、パート従業員金田美津子さん(49)の元に買い物客が駆け込んできた。現場に着くと既にほかの客が久保さんに心臓マッサージをしていた。
 数年前に救命講習を受けたことのある金田さんは、その客と交代し、当時の副店長と2人で必死に心臓マッサージと人工呼吸を繰り返した。久保さんの顔色は見る見るうちに悪くなっていったが、懸命に心肺蘇生を施した。
 店内にAEDはなかった。店のスタッフが、近くのホームセンターやドラッグストアを探し回ったが、見つからない。
 AEDがない―。緊迫した状況の中、パート従業員橋良子さん(53)は、近くのユニバース南類家店へ無我夢中で走った。「AEDを貸してください」。サービスカウンターの女性からAEDを受け取ると、急いで久保さんの元へ戻った。
 AEDが現場に届くと、看護師になるために勉強中だったという買い物客の女性がパッドを久保さんの体に装着した。自動で心電図が解析され、電気ショックが掛かった。意識は戻らなかったが、その後も心肺蘇生は続けられた。
 「消防です」。4時5分、救急隊3人が現場に到着した。救急隊は、心電図が見られるモニター付きAEDを装着。久保さんに意識、呼吸、脈はなく、心肺停止の状態だったが、モニターでは波形を示していた。
 市立市民病院のドクターカーが到着したのは4時7分。医師が救急車に乗り込み、久保さんは搬送された。病院では人工心肺装置(PCPS)を付け、手術が行われた。術後も心肺停止するなど、危険な状態が続いたが、一命を取り留めた。
 意識が戻ったのはそれから13日後。リハビリを行い、約2カ月後に退院した。久保さんは「心臓マッサージをしてくれた人やAEDを取りに走ってくれた人、消防や病院の人など、皆さんの連携のおかげで命が助かった」と語り、感謝の思いを強調する。
(渡部優)
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