ふるさと幸福論:(2)都内で深める地元の絆(2015/10/09)
デーリー東北

ふるさと幸福論 〜北奥羽の未来像〜
第1部 「ただいま」の風景

(2)都内で深める地元の絆(2015/10/09)

北千住の居酒屋「炭火焼きごっつり」で語り合う西村直剛社長(右)と永田美香さん。“リトル八戸”は、同郷の絆を深める拠点となっている=9月、東京都内
 9月下旬、東京都足立区のJR北千住駅から歩いて5分の雑居ビル。急な階段を上がった2階にある居酒屋「炭火焼きごっつり」は、5連休最終日の夜にもかかわらず、多くの客で席が埋め尽くされていた。
 「ごっつり」とは、八戸市を中心とする南部地方で、得意げな様子を意味する方言。八戸前沖さばの串焼き、八戸せんべい汁など、北奥羽の料理や地酒がメニューに並ぶ。
 経営するのは、八戸市尻内町出身の西村直剛社長(47)。常連客のようにジョッキ片手に酔客と談笑するのが、いつものスタイルだ。
 店には二つの顔がある。一つは、首都圏の客に南部地方の食材を発信するアンテナショップ。そしてもう一つは、都会で生活する青森県出身者が故郷を懐かしみ、集う場所だ。
 テーブル席では、五戸町出身の男性が、「やっぱり酒は菊駒だ」としみじみ。月1回ほど横浜市から通うという八戸市出身の会社員男性は、「ここに来ると八戸に帰った気分になるよ」と、分厚いサバの刺し身を頬張った。
 「都会に出てきたばかりの不安や寂しさが、少しでも軽減されれば」と、声を掛けた青森県出身のアルバイト店員も多い。
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 駅周辺の通称・北千住は、西村さんのほか、教育、医療関連事業を展開する「CAN」、インターネット放送局などを運営する植村昭雄さん(48)や、音楽教室「JOYミュージックスクール」を経営する松舘香代子さん(31)ら、多くの八戸市出身者が活動の拠点としている。
 雇用や学びの場を求める同郷の人たちが自然と集まり、“リトル八戸”とも呼ばれるようになった。
 「ここで厳しい時期を助けられた」と語るのは、八戸市白銀町出身の永田美香さん(48)=台東区=。25歳でチンドン芸の魅力に目覚め、都内で活動していたが、東日本大震災後は仕事が激減。「何の役にも立てない」と、暗い気持ちで日々を過ごしていた。
 そんな時、高校の先輩である植村さんと出会い、リトル八戸との関わりが始まった。植村さんから仕事の紹介を受け、西村さんの店で同郷の仲間に励まされて元気を取り戻し、2013、14年の全日本コンクールで準優勝、今年は優勝を勝ち取った。
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 故郷の人材や情報が集まるリトル八戸では、ネットワークが意外なビジネスや事業につながることも少なくない。8月に開かれた大相撲巡業八戸場所は、勧進元の社長がごっつりを訪れたことが発端で実現し、西村さん自身も実行委員長として駆け回った。
 居酒屋の社長がなぜそこまでやるのか。西村さんの答えは、「罪滅ぼし」だ。
 約30年前、都内の大学に進学後、実家の事業が失敗。中退し、運送業界で17年間、夢中で働いた。「倒産でたくさんの人に迷惑を掛けた」という後ろめたさから、いつの間にか帰省で八戸駅に降り立つと、顔を隠す癖が付いていた。
 脱サラし、飲食店経営に乗り出したのは、そんな故郷への複雑な思いを断ち切るためでもあった。
 「東京から八戸を応援する拠点でありたい」。故郷への足取りは、前より少しだけ、軽い。

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