ふるさと幸福論:(6)農村の豊かさ広めたい(2015/11/01)
デーリー東北

ふるさと幸福論 〜北奥羽の未来像〜
第2部 “何もない”のチカラ

(6)農村の豊かさ広めたい(2015/11/01)

多くの人を呼び込んでいる南部町内の新イベント。上から時計回りにカラフルラン(2015年8月)、サブカルフェスタ(同)、名久井岳トレイルランニング(5月) (写真はコラージュ)
 久しぶりの故郷は、「何にもない町」に見えた。2011年冬、後藤欣司さん(28)は警視庁を辞め、南部町にUターンした。東日本大震災、仕事の悩み、母親の体調不良…。幾つもの理由が重なった。
 大学時代から住んだ東京に比べ、物足りなさはあった。だが、町の人に「せっかく都会で就職したのにもったいない」「こっちは何もないでしょう」と言われるのも、違和感があった。
 山と畑に囲まれた環境で、家業の新聞販売店や、地域のイベントを手伝い過ごす日々。外出すれば誰かが声を掛けてくれ、何かあれば、すぐに「手伝うぞ」と人が集まる。消防団など、必要とされる居場所もある。
 次第に地元の暮らしになじみ、農業をベースに隣近所が助け合う生き方に「日本人っていいな」と、尊さを感じるようになった。
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 ここが一番楽しい場所だと、みんなに気付いてほしい―。そんな思いを抱える中、仲間内で「面白いことをして盛り上げよう」という話になった。豊かな自然に恵まれた南部町。未整備の道を走る「トレイルラン」が流行していると聞き、「これだ」と飛び付いた。
 会場は、町を象徴する名久井岳。起伏に富んだコースや、休憩所に用意した地元産の果物など、ご当地ならではの魅力が詰まった行事は好評を博し、初開催の14年は100人、2回目の今年は150人を集めた。
 成功には、地元有志や行政の協力が欠かせなかった。後藤さんは思う。「ここには、お金だけでは得られない豊かさがある。足りないものを数えるより、今いる場所であるものに幸せを感じられれば」。参加者と住民の交流をさらに増やし、トレイルランで農村の価値観を広めたいと願っている。
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 南部町では、ほかにも若者の柔軟なアイデアを生かしたイベントが次々と生まれている。
 今年8月にチェリリン村で開かれた「カラフルラン」は、参加者が色付きの水を浴び、特産の果物を食べながらゴールを目指す、一風変わったイベントだ。初開催ながら、20代女性を中心に県内外の200人が参加し、歓声を上げた。
 同町でのインターンシップをきっかけに、地域の特色を生かした活性化を図ろうと、都内の大学生2人が企画。うち、専修大4年の藤田健太郎さん(23)は同町出身だ。
 上京した当時は「ブランド物の服や商業施設など、地元にないものばかりに憧れていた」。熱意ある若手農家らに支えられた経験から、「地元とのつながりを持ち続けて働きたい」と考え方が変わった。「成功は環境に恵まれていたから。ほかの地域では難しかったのでは」と振り返る。
 14年から2回、アニメやゲームのファンがキャラクターに扮(ふん)するコスプレイベントを主催した、地域おこし協力隊の源田朋仁さん(31)=神奈川県出身=も、「苦情一つなく、こんなに自由にやらせてくれる場所はない」と、地域の協力態勢に感謝する。
 町民は、都会でもまれた若者が積極的に挑戦する姿を、頼もしく感じている。NPO法人青森なんぶの達者村代表理事の沼畑俊吉さん(42)は、「以前から若手がまちおこしを担ってきた経緯があり、行政にも町民にも温かく見守ろう、という空気がある。こうした土壌を引き継ぎ、郷土を思う人材を育てたい」と、将来を見据えた。

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