ふるさと幸福論:(12)Uターン起業、不便なく(2015/12/09)
デーリー東北

ふるさと幸福論 〜北奥羽の未来像〜
第3部 若者リアル@仕事

(12)Uターン起業、不便なく(2015/12/09)

自宅兼事務所で働く中里貴幸さん。IT技術を活用し、競争力のある農業ビジネスを展開しようと意気込む=11月下旬、八戸市内
 地方にとって、大消費地との距離は、長らく解決し難い課題だった。だが、インターネットの普及により、環境は変わりつつある。
 八戸尻内町の中里貴幸さん(40)=五戸町出身=も、「ネットがあれば時間と空間を超えられる」と、ビジネスの発展に可能性を見いだした一人。「農業を“勝てる”産業に成長させたい」と、昨年2月に東京都からUターンし、農業法人を設立した。
 目指しているのは、農産物の加工を含めた6次産業化と、それらの通信販売。まずは農業を習得しようと、実家の畑を手伝いながら、準備を進めている。
 県立八戸高校を卒業後、都内の私立大学に進学。出版業界などを経て2002年、都内でインターネット広告会社に就職した。
 当時、ネット広告の市場はそれほど大きくなかったが、「ワンクリックで大勢の人に物を買わせることができる。これはすごい技術だ」と、将来性を確信した。
 残業や徹夜も当たり前の毎日だったが、成長産業に身を置いているという実感から、つらさは感じなかった。「昇りのエスカレーターに乗っているよう」な高揚感を味わいながら、アドバイザーとして携わった代理店の売り上げを激戦エリア1位に導くなど、実績を挙げた。
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 がむしゃらに働いていたが、「いずれは独立したい」との思いも抱えていた。どこで何をやるか考えた時、頭に浮かんだのは両親の顔。「実家の農業を継いで親孝行しよう」と決意を固めた。
 「これまでの農業には、商品設計力や販売戦略などの視点が欠けていた。僕にはこれらを補うノウハウがある」。進むべき方向が決まると、早速、物件を探して引っ越した。
 思い切ってUターンしてみると、それほど生活に不便は感じなかった。ネット通販を使えば必要な物は何でも手に入るし、約3時間あれば新幹線で気軽に都心に出られる。在京の知人に住んでいる場所を問われると、「東京駅から5駅の所」と答えている。
 自宅兼事務所のアパートは、JR八戸駅近くの1LDK。家賃は月5万円だが、同じ広さの部屋を都心部で借りると10万円はする。
 何より気に入っているのが、温泉の近さだ。「農作業の後、大きな浴槽で手足を思い切り伸ばす時が、最高にリラックスする瞬間。東京でこんなぜいたくは味わえない」と顔をほころばせた。
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 東京で働いていた時に比べ収入は減ったというが、出て行くお金も減り、自由に使える時間は増えた。「広い部屋で好きな時間に仕事ができ、満員電車に乗らなくてもいい。生活の満足度は確実に高まっている」と言い切る。
 唯一、足りないと感じているのは、「ビジネスセミナーなどでスキルやモチベーションを高める機会」だ。月に1回程度上京し、刺激を“補充”する。
 「表に出ていないだけで、地方にも意欲ある人材は居る。そうした意欲をさらに伸ばす機会が、これからの地方に求められているのでは」と指摘した。
 (第3部終わり)

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