ふるさと幸福論 〜北奥羽の未来像〜
デーリー東北

ふるさと幸福論 〜北奥羽の未来像〜
第7部 地方にエール

 人口減少や少子高齢化といった時代の波は、待ったなしに押し寄せる。ただ、その中でも北奥羽地方で豊かに生きる方法があるのでは―。そんな思いから始まった連載「ふるさと幸福論」は、これからの時代を担う世代にスポットを当て、将来への道筋を探ってきた。締めくくりとなる第7部「地方にエール」では、インタビューを通じて地方の明るい未来の描き方を考える。

(29)「帰って来て良かった」(2016/06/02)

ソムリエール・池上沙羅さん
 ―東京、ニューヨーク(NY)、イタリア・フィレンツェなど、世界中で暮らした経験をお持ちですが、海外へ出る以前は、地元にどのような思いを抱いていましたか。
 10代の頃は、「何もない八戸から早く出て行きたい」としか考えていませんでした。子どもの頃から憧れていた「ベルサイユのばら」の世界に飛び込みたくて高2の時、宝塚音楽学校の入学試験を受けました。
 結果は落選でしたが、ダンスや音楽の楽しさが忘れられず、東京の大学に進学。演劇、声楽、ジャズダンス、バレエ、パントマイムなど、レッスン漬けの日々を送りました。
 東京での生活は充実していましたが、星が見えなかったり、イカの刺し身が透き通っていなかったりと、生活の中で八戸との違いを実感しました。あれだけ出て行きたかった地元なのに、帰省の新幹線で南部弁を耳にすると、心地よさを感じるようになりましたね。

 ―海外生活を経て、思いは変化しましたか。
 八戸地域は気候が良く、食べ物や水がおいしく、人々は優しく温かい。これほどの資源がそろっていることは決して当たり前ではなく、何て豊かな土地だろう、と実感しました。
 イタリアでは、水は貴重で、使える量にも限りがあるので、シャワーも数分しか使えません。蛇口の水は飲めないので、毎日、シエスタ(昼寝休憩)で店が閉まる前に水を買いだめするのが常識。蛇口の水をおいしく飲めるだけでも、ありがたいことです。

 ―29年ぶりに八戸へ戻った印象はいかがですか。
 「八戸は何もないでしょう」とよく言われます。そんなときは「八戸の魅力は5W! @Weather(気候がいい)Awater(水が美味)BWumaimono(うまいものが多い)CWomen(女性が美しく)DWine(ワイン創出プロジェクトが進んでいる)」と答えています。
 奥ゆかしくて照れ屋。それも素晴らしい価値ですが、この地域はすごいポテンシャルを秘めていると思います。八戸ワインフェスはすごく活気があるし、世界的に有名なアーティストのコンサートも開かれるなど、文化的水準も高い。昨年は映画の舞台にもなり、大きなコンベンションを成功させた実績もあります。
 NY時代は毎年、日本人合唱団のコンサートで童謡「ふるさと」を聴き、たくさん涙を流して泣いていました。でも八戸に帰り、階上岳を眺めながら新井田川のほとりでこの歌を歌った時、不思議と涙は出ませんでした。素晴らしいふるさとが今ここにあって、心から「帰って来て良かった」と思うからでしょうね。

 ―地域の活気を生み出すアイデアはありますか。
 まずは住んでいる人自身が豊かさに気付くことが大切ではないでしょうか。その一歩がお互いに価値を認め、良いところを褒め合う環境をつくることだと考え、日本ほめる達人協会の「ほめ達検定」普及に取り組んでいます。相手を褒めるにはまず、自分の価値を発見して認めて褒めることが大切だからです。
 さらに、元気が出る華やかな色の服を着たり、花を贈り合ったりする習慣をつくれたらいいな、と考えています。おしゃれして出掛けるお店は、一つつくりました。花と笑顔、褒め言葉のあふれる街になってほしいです。
 (第7部終わり)
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 連載「ふるさと幸福論」は今回で終了します。

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第7部 地方にエール

 人口減少や少子高齢化といった時代の波は、待ったなしに押し寄せる。ただ、その中でも北奥羽地方で豊かに生きる方法があるのでは―。そんな思いから始まった連載「ふるさと幸福論」は、これからの時代を担う世代にスポットを当て、将来への道筋を探ってきた。締めくくりとなる第7部「地方にエール」では、インタビューを通じて地方の明るい未来の描き方を考える。

第6部 “日本一”の県・福井

 人口減少、若者の都市部流出、中心街衰退…。地方を取り巻く環境はどこも同様に厳しい。ただ、そんな中でも見方や価値観を変えれば、地方で幸せに暮らす手段があるのではないか。全国で最も幸福度が高いとされる福井県を訪れ、ヒントを探ってみた。

第5部 若者リアル@学び

 北奥羽地方には、進学を機に多くの若者が県外へ転出する現実がある。第5部「若者リアル@学び」では、若者がどのような夢を追い、どんな環境を必要としているのかを探る。

第4部 子育て見詰めて

 人口減少が進み、子どもの数も減り続けている北奥羽地方だが、育てる場所としてこの地域ならではの魅力もあるのではないか。第4部では、目下奮闘中の子育て世代にスポットを当て、今どきの風景を切り取りながら、これからの子育てを考える。

第3部 若者リアル@仕事

 好きな地元で働く、都会へ出て経験を積む―。働く場所の選択は、その後の人生も左右する大きな決断となる。第3部「若者リアル@仕事」では、地方出身の若者が仕事をめぐる現実をどう受け止め、その上でどんな働き方を求めているのかを探る。

第2部 “何もない”のチカラ

 何もない―。地方で暮らしていると、地元の魅力をつい忘れがちになり、発してしまう言葉でもある。第2部「“何もない”のチカラ」では、実はたくさんある北奥羽地方の地域資源の一部にスポットを当てるとともに、掘り起こしやPRに奔走する人々を紹介する。

第1部 「ただいま」の風景

 少子化、人口流出に歯止めがかからない北奥羽地方。ただ希望もある。本紙の企画「語ろう 北奥羽の未来〜1000人の声」では、自分の住む地域を93%が「好き」と答え、「将来的には地元で暮らしたい」と語る若者も多く見られた。これからの時代、地方で生きることとは? 新連載「ふるさと幸福論」で考えていく。

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