魚種変動の衝撃:第1部 イカはどこへ(5)頼みの漁場荒らされる(2018/04/20)
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第1部 イカはどこへ

 イカの街を突如襲った長期不漁。ほかにもイカと並ぶ二本柱のサバが小型化の傾向が続くなど、急激な変動に揺れている。現状と背景に迫るとともに、今後の針路を探りたい。

(5)頼みの漁場荒らされる(2018/04/20)

大和堆周辺で違法操業する北朝鮮の木造船=2017年9月中旬(海上保安庁提供)
 昨年11月以降、日本海沿岸には突如として木造船の漂着や漂流が相次いだ。青森県内では計12隻が漂着し、船内や付近で身元不明の計12遺体が収容された。
 全国で確認された漂着・漂流は104件。船体のハングル文字や「朝鮮人民軍」のプレート、遺留物などから木造船の多くは北朝鮮籍とみられている。
 12月には、北海道の無人島に漂着した北朝鮮船の船長らが、発電機を盗んだとして逮捕された。
 その船内からは、ある海域を含む海図が見つかった。「大和堆(やまとたい)」だ―。
 ■    ■
 日本海のほぼ中央に位置する大和堆は、日本の排他的経済水域(EEZ)内にある。周辺より水深が浅く、スルメイカだけでなくカニ、エビ類の好漁場として知られている。1970〜80年代の不漁時に登場した中型イカ釣り船が漁場として開拓してきた。
 近年のイカ不漁は太平洋側に来遊する「冬生まれ群」の資源減少が要因。それに比べて日本海の「秋生まれ群」は資源が割と安定しており、八戸港にとって中型イカ釣り船の水揚げは頼みの綱となっている。
 ところが、2016年秋に突然、北朝鮮の船が大和堆に殺到してきた。全国いか釣り漁業協会によると、数百隻の小型木造船に加え、燃料や食料を提供する母船を確認。日本のEEZ内での明確な違法操業だ。
 しかも、日本船の集魚灯の下に集まったスルメイカが目当て。いくら離れても、北朝鮮の船が次々と寄ってきたという。同海域では八戸所属の23隻を含め日本の約70隻が操業する。木造船との衝突や、流し網がスクリューに絡まるのを恐れ、撤退せざるを得なかった。
 17年秋のシーズンも同様で、第67源栄丸(八戸所属)の大橋社漁労長(70)は「仕方なく、大して漁がない別の漁場へ向かうしかなかった。かなりのダメージだ」と悔しがる。
 9月下旬、漁場を知り尽くした中型イカ釣り船の船主は「11月になれば海がしけるので、小型船は大和堆まで漁に出られないだろう。それまでの我慢だ」との見通しを口にした。
 その予想通り、10月下旬以降の海は台風の通過もあって大荒れとなった。「転覆した木造船が何隻も漂っているのを見た」。第71八重丸(同)の橋本文昭漁労長(65)は証言する。
 漂着船の船内からはイカ釣り漁具が見つかっている。生存者の証言からも、11月以降に日本沿岸に漂着した船の大半は、大和堆で操業していた北朝鮮のイカ釣り船とみて間違いない。
 それにしても、なぜ北朝鮮船が突如現れたのか。食料確保に迫られた国内事情に加え、函館頭足類科学研究所の桜井泰憲所長(67)はイカの南下ルートの変化が一因と指摘する。水温変動で朝鮮半島近くから日本寄りに変わり、それを追うように「どんどん沖合に出てきた」との見方だ。
 北朝鮮の漁師もイカに翻弄(ほんろう)され、嵐にのみ込まれたのだろうか―。
 ◇
 資源量が急減する中で、外国船に荒らされる頼みの漁場。資源保護の重要性が増す局面で「日本だけ漁獲を抑えても仕方ない」(イカ釣り船主)との不満もくすぶり始めた。だが、外交交渉が通じない相手だけに協調の道筋は見えない。橋本漁労長は「海上保安庁が違法操業を徹底的に取り締まるべきだ」と憤る。
 スルメイカは1年の短い寿命故に、資源量はその時々の海洋環境に左右されるのが宿命。そこに、隣国との難しい国際問題という新たな要素が加わった。
 今また急速に数を減らしつつあるスルメイカは、私たちに何を告げようとしているのか。
 (第1部終わり)

のしかかる国際問題 違法操業、北ミサイル落下(2018/04/20)

スルメイカの好漁場「大和堆」
 八戸港所属の中型イカ釣り船は昨シーズン(2017年5月〜18年2月)、北朝鮮による違法操業とミサイル落下に漁場を脅かされた。スルメイカの資源減少に悩まされる中で、難しい国際問題が漁業者に重くのしかかっている。
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 スルメイカの好漁場「大和堆(やまとたい)」は日本海のほぼ中央に位置する海底山脈で、周辺より水深が浅い。冷水と暖水の境界部に当たることもあり、イカだけでなくカニやエビ類の好漁場として知られている。
 日本の排他的経済水域(EEZ)に含まれ、許可を得ない他国船の操業は違法となる。ただ、北朝鮮はEEZを定めた国連海洋法条約を締結していない。
 大和堆でスルメイカが取れるのは春と秋の2回。八戸港からの出漁は春は2、3隻にとどまるが、秋は大半が回っていた。北朝鮮の木造船に漁場が占拠されてからは、北海道沖の「武蔵堆」などほかの漁場に向かわざるを得なかった。
 昨年5月には北朝鮮が発射したミサイルが大和堆の周辺に落下。近くで操業していた八戸所属の中型イカ釣り船からは「操業をやめるわけにはいかないし、ミサイルを避けられるわけでもない」と、諦めの声が漏れた。7月には漁船が密集する北海道沖の漁場近くにも撃ち込まれた。
 核実験やミサイル発射など北朝鮮問題が緊迫した夏ごろには「戦争が起きそうになったら日本海での漁はどうするか」と懸念する声も上がった。
 北朝鮮は最近になって融和ムードを打ち出すものの、米国や中国などの思惑も絡む交渉の先行きには不透明感も漂っている。八戸港の所属船は北朝鮮の動向次第で、来シーズンも厳しい環境での操業を強いられる可能性がある。

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