魚種変動の衝撃:第2部 レジーム・シフト(1)マイワシ復活の兆し(2018/05/05)
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第2部 レジームシフト

  八戸港を襲った急激な資源変動を引き起こすものは何か。第2部では背景に迫る。

(1)マイワシ復活の兆し(2018/05/05)

巻き網船団が八戸港に水揚げしたマイワシ=2017年7月14日
 2017年9月中旬、八戸港では秋の訪れとともに、巻き網船団によるマイワシの水揚げが本格化していた。船の魚槽から銀鱗(ぎんりん)を輝かせたマイワシが巨大な網ですくわれると、トラックの荷台にどばどばと注がれる。マイワシは飼料や缶詰に加工されるため、続々と出荷されていった。
 八戸港で昔ながらの“秋の風物詩”とでも言いたくなる、この光景―。実はそうではない。なぜなら、見られるようになったのは、ごく最近だからだ。
 北海道東沖でマイワシの漁場が形成され、八戸にも大量に運ばれだしたのは14年。17年のイワシ類の水揚げ数量は3万1431トンで、13年の8倍以上に伸びた。減り続けるスルメイカと反比例するかのようだ。
 背景にあるのは回遊ルートの変化ではなく、資源量そのものの増大。1980年代に全国で大量に漁獲され、90年代半ばになるとぱったり姿を消したマイワシが、最近になって復活しつつあるというのだ。
 「80年代の高水準期と比べればまだまだ少ないが、10年ごろから増加傾向に転じた。マイワシが生き残りやすい海洋環境に変わったのではないか」。国の資源評価を担う水産研究教育機構・中央水産研究所(横浜市)の古市生(しょう)研究員(30)は、そう指摘する。
八戸港の生イカ、イワシ、サバの水揚げ数量
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 前回、マイワシが増え始めたのは70年代後半。八戸の前沖でも、徐々に姿を消したスルメイカと入れ替わるようにマサバ、マイワシと順に取れだした。
 その増え方は爆発的だった。マイワシを主体とするイワシ類の水揚げ数量は77年が5万6923トンで、それまで10年間の合計を超えた。サバ豊漁と重なった78年には八戸は10年ぶりに水揚げ日本一を奪回。79年に13万3464トン、82年に36万8595トン、ピークの88年には46万6252トンに達した。
 八戸の前沖は江戸時代から「イワシの浜」。浜に近づいたのを地引き網で引き寄せ、畑作肥料に加工して関東地方に出荷した。
 網船で沖へ出た明治以降も主要な漁獲対象だったが、ちょうど太平洋戦争の終戦を境に水揚げは減少に転じた。スルメイカ漁が戦後復興を支えたのとは対照的な姿だ。それが、70年代後半になって突然の復活。ほとんどが家畜・養殖飼料、魚油として世界中に出荷されていった。
 当時を知る経済関係者は「高い付加価値は付けられないので、イカ、サバほどの柱にはならなかった。加工食品の製造まで手掛けたのはごく一部の業者。だが、大漁でハマがにぎわったのは確かだ」とする。
 戦後の八戸沖には「イカの時代」「サバの時代」「イワシの時代」が順繰りに訪れる形となった。海外漁場へこぎ出した遠洋漁業と共に、八戸を6度の水揚げ日本一に輝く水産都市へと発展させた。
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 では、八戸沖で3魚種の水揚げが急激に入れ替わった70年代、海の中では一体何が起きていたのか―。
 同機構・東北区水産研究所(宮城県塩釜市)の木所英昭グループ長(48)によると、70、80年代の研究者はイカの取り過ぎが原因と考えていた。「ところが、90年代以降の研究で、別の要因が大きいことが分かった」
 背景にあったのは十数年規模の海洋環境の変動。それが70年代に日本近海の生態系を一気に変えたと考えられるようになった。
 「魚種ごとに産まれた場所も、時期も、生息場所も、餌も違い、資源変動のメカニズムは個々に異なるのに、全体を見ると同調して変動していた。ある時を境にジャンプするように入れ替わった」(東北大大学院・片山知史教授)
 レジーム・シフト―。そう呼ばれる現象だ。
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 八戸港を襲った急激な資源変動を引き起こすものは何か。第2部では背景に迫る。

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