魚種変動の衝撃:第2部 レジーム・シフト(2)謎だらけの海洋現象(2018/05/06)
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第2部 レジームシフト

 八戸港を襲った急激な資源変動を引き起こすものは何か。第2部では背景に迫る。

(2)謎だらけの海洋現象(2018/05/06)

1970年代後半から90年代前半にかけてのマイワシに関する本紙記事。左から右へ年代が新しくなり、豊漁から不漁への推移が分かる
 「レジーム・シフトには二つの定義がある」。
 大気と海洋の気候に詳しい北海道大・見延庄士郎教授(55)は解説する。
 一つは気候に関する物理的なレジーム・シフトで「例えば、ある気候状態が10年続いたのが、急にパッと別の状態に変化してまた10年持続する。なだらかな変化ではなく階段状に変わるイメージ」だという。
 もう一つは生物のレジーム・シフト。「海洋で種の構成が大きく変わることを意味する。有名なのはマイワシの増減だ」
 「気候」と「生物」―。二つのレジーム・シフトはどのような関係にあるのだろう。
 ■    ■
 マイワシが爆発的に増えた1970年代後半。太平洋では熱帯から北まで「非常に大きな気候のシフトが起きた」(見延教授)。
 PDO(太平洋10年規模振動)という指数がある。20〜30年周期で繰り返される太平洋の寒暖変動を捉えるとされ、気候のシフトを計る指標の一つだ。
 気象庁のデータを見ると、確かに77、78年にPDOは「負」から「正」へ転換している。すなわち、日本周辺を含む海域の寒冷期入りだ。
 八戸沖を含む魚種の変動もこれに対応したもので、気候と生物の二つのシフトがほぼ同時に発生したと考えられるという。同じ現象は20年代、40年代にも起こっており、寒暖が切り替わるたびにマイワシの資源量は大きく変動してきた。20年代は増え、40年代は減り、70年代は増えた。
 ところが、90年代にマイワシが減る生物のシフトが起きた時には、対応するはずの気候のシフトが明確には認められないという。
 見延教授は「気候もシフトしたという人もいれば、否定する人もいる。かなり多くの研究がされたが、結局、どちらか分からなかった。今では気候のシフトには周期性もないだろうと考えられている」とする。
 見延教授によると、現時点で研究者のコンセンサス(意見の一致)として言えるのは、
 ▽70年代のように気候のシフトが生物のシフトを引き起こすことがある。
 ▽気候のシフトが生物のシフトを起こすメカニズムは分からない。
 ▽生物だけで勝手にシフトする場合もある。
 ▽気候のシフトに周期性はないだろう。
 ▽気候のシフトがなぜ起きるか分からない―。
 要するに、レジーム・シフトについては分からないことだらけだ。
 2000年代前半には農林水産省の主導で国内の英知を結集して研究を進めたが、成果は乏しかった。プロジェクトに参画した見延教授は「データが足りな過ぎた。環境と魚種の変動予測は非常に難易度が高いことが分かった」とする。
 中期的な寒暖変動とは別に、地球温暖化という長期的な傾向もあり、予測を一層難しくさせている。
 ■    ■
 いつ起こるか分からない気候のシフトと、少なくとも江戸時代から周期性が認められるマイワシ(生物)のシフト―。最新研究でも明確な関連は認められないのに、10年代半ば以降は再び二つが同じ方向へ動いているようにみえる。
 14年にPDOは負から正へ転換。時を同じくして、八戸港ではマイワシが大量に揚がり始めた。

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