魚種変動の衝撃:第2部 レジーム・シフト(4)黒潮の流速が要因?(2018/05/09)
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第2部 レジームシフト

 八戸港を襲った急激な資源変動を引き起こすものは何か。第2部では背景に迫る。

(4)黒潮の流速が要因?(2018/05/09)

マイワシの生活史
 「1988年に始まったマイワシの減少は、間違いなく黒潮がトリガー(引き金)となった」。海洋研究開発機構(神奈川県)で環境と資源の変動メカニズムを研究する西川悠(はるか)・特任研究員(36)は強調する。
 1920年代、40年代、70年代と、中期的な寒暖変動(気候のレジーム・シフト)に呼応するように発生したマイワシの増減(生物のレジーム・シフト)。ところが、90年代にマイワシが激減したシフトでは、対応する気候シフトが発生したか明確ではなかった。
 西川研究員は、マイワシが増減するメカニズムは黒潮の速さに答えが求められると考えている。
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 黒潮の速さがなぜマイワシの数を決めるのか。南の亜熱帯から流れてくる黒潮は、冬でも水温22〜23度ほどと暖かい。ところが、日本列島をかすめるように東へ流れる途中で冷たい空気に触れ、水温が下がる。
 流れが速いと冷たい空気に触れる時間が短いのであまり下がらず、逆に遅いと長く触れるので大きく下がる。これが黒潮の水温を決定付けるという。
 マイワシが減り始めた88年は黒潮が速まり、対応して水温は上昇。これまでの研究で、稚魚の成長に最適な水温16度に対し、当時は19度ほどだったのが分かっている。さらに、水温が高いと海がうまく混ざらない。下層から栄養が湧き上がってこず、餌のプランクトンの減少を招いた。
 西川研究員は「適水温と餌という二つの条件で成長が遅れ、ほかの生物に食べられる稚魚が多かった。加えて80年代の爆発的な増加で『密度効果』が発生しており、病気がはやりやすかったり、親の栄養悪化で卵の質が落ちたりしたのではないか」と指摘する。
 88年から4年連続で悪い環境が続き、90年代の資源急減につながったと分析。増える際は逆のメカニズムが働くと考えているが、前回増えた70年代後半はデータがないので厳密な解析はできないという。
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 さらに、数年後の黒潮流速の予測もできると考えている。鍵はハワイ沖の海面高度だ。4年ほどかけて西の黒潮上流域へ伝わる。高いと沖から陸へ向かう海面の傾きがきつくなり、黒潮を速める。低いと逆だ。
 現在のハワイ沖を見ると「黒潮の水温を低める方向にある。少なくとも急激に上がる予兆はないので、数年はマイワシにとっていい環境が続くのではないか。このペースだと、あと5年で爆発的な増加も期待できる」(西川研究員)
 ハワイ沖の海面高度の変動については、アリューシャン低気圧の強弱などによる風の変動が主な要因と考えられている。
 大気と海の間でいくつもの要素が複雑に絡み合い、ダイナミックに変動する気候―。条件が整うとマイワシは数十年ごとに爆発的に増えてきたのは確かだ。
 そして、空を覆い尽くすイナゴのように海を占めたマイワシは、餌の競合や捕食関係、生息スペースなどを通じて、海の生態系全体に影響を与える。
 ここ数年、八戸港で見られるマサバの異変とは無関係だろうか。

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