魚種変動の衝撃:第3部 危機を越えて(1)“聖地復活”へマサバ養殖(2018/06/08)
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第3部 危機を越えて

 水揚げ魚種の急激な変動に揺れる八戸などの産地。水産業界は危機感を強めるものの、解決への糸口は容易に見えない。第3部では現状打開を図る動きや、今後へのヒントを探る。

(1)“聖地復活”へマサバ養殖(2018/06/08)

「サバズーカ」の祝砲でSABAR小浜田烏店の開店を祝う関係者=3月31日、福井県小浜市
 古くから京の都に日本海の豊富な海産物を運んだ「鯖街道(さばかいどう)」。3月31日、その起点となる福井県小浜市の小さな漁村に、サバ料理専門の「SABAR(サバー)小浜(おばま)田烏(たがらす)店」がオープンした。
 提供するのは、近くの漁港内のいけすで大きく育てたマサバ。鯖街道の終点に当たる京都の酒蔵から出た酒かすを餌に混ぜ、「よっぱらいサバ」のブランド名で売り出しを図る。
 「この日を待ち望んでいた。ここはサバの聖地≠ナあり、漁獲量が減ったサバを復活させて食文化を発信しよう」―。松崎晃治市長(60)は気勢を上げると、バズーカ砲を模したサバ型の「サバズーカ」を撃って開店を祝った。
SABAR小浜田烏店で提供するマサバの姿造り=3月31日、福井県小浜市
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 かつてはサバの水揚げでにぎわった小浜だが、産地としての現状は厳しい。漁獲量は1970年代の3千トン超から右肩下がりで、2014年には1トンを切るまで激減。松崎市長は「私たちはサバを食べて育ったのだが…」と嘆く。
 危機感を強めた市は15年、鯖街道が文化庁の「日本遺産」に選ばれたのを機に、「鯖、復活プロジェクト」を立ち上げた。
 パートナーに選んだのがSABARを全国展開する「●(魚へんに青=さば)や」(大阪府)。小浜田烏店を含め国内14店舗、シンガポールに1店舗を有している。右田孝宣社長(43)は「全国のサバファンが一生に一度は巡礼に訪れる店にしたい」と意欲を燃やす。
 産地・小浜の復活に懸ける●(魚へんに青=さば)や側にも切実な事情があった。全国的なサバの小型化によって、八戸など東北産の脂が乗った大型サイズを確保するのが難しくなっていたのだ。
 右田社長は「4年前から全国で急にサバが小さくなった。600グラム以上が2、3割だったのに昨年は1%以下。うちはサバ一本の商売なので、このままではとてもやっていけない」と危機感を訴える。安定的に大型サイズを仕入れるには、市と共に自ら養殖に乗り出すしかないと考えた。
 北陸地方で「ピンサバ」と呼ばれる400グラム以下の小型サバは、市場価値が一気に下がる。プロジェクトでは定置網で漁獲された200グラム以下のピンサバを仕入れ、いけすで400グラム以上に育てる。通常よりも高い単価で買い付けるため、漁業者にとってのメリットも大きいという。
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 育てたサバを提供するのは小浜に加え、大阪、京都、東京のSABAR4店舗。全て鯖街道をイメージした店づくりで、小浜のPR役も果たしている。
 開店と養殖に必要な資金は、インターネットで小口資金を募る「クラウドファンディング」で全国から1億円以上を集めた。出資は1口2万6250円で、事業の収益次第で出資者に利益や損失が出る仕組み。5千円分の食事券が特典で付き、来店者を増やすPR効果も期待できる。
 「これで小浜のサバを継続的に育てる仕組みと、全国に発信するための基盤が整った」。農林水産省から市に出向し、プロジェクトの中心となった御子柴北斗さん(33)は胸を張る。
 衰退する産地とサバ一本に懸ける飲食店がたどり着いた一つの答え―。もちろん、イカとサバの大量水揚げに支えられた八戸港とはビジネスモデルが根本的に異なる。だが、全国のサバファンも巻き込んだ小浜のプロジェクトの中に、八戸など北奥羽の産地にとっても生き残りのヒントが秘められていないだろうか。
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 水揚げ魚種の急激な変動に揺れる八戸などの産地。水産業界は危機感を強めるものの、解決への糸口は容易に見えない。第3部では現状打開を図る動きや、今後へのヒントを探る。

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