魚種変動の衝撃:第3部 危機を越えて(2)「天然にはすがらない」(2018/06/09)
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第3部 危機を越えて

 水揚げ魚種の急激な変動に揺れる八戸などの産地。水産業界は危機感を強めるものの、解決への糸口は容易に見えない。第3部では現状打開を図る動きや、今後へのヒントを探る。

(2)「天然にはすがらない」(2018/06/09)

小浜湾に浮かんだいけすから養殖したマサバを水揚げする地元漁協の組合員=3月31日、福井県小浜市
 3月31日、福井県小浜市の小浜湾に浮かんだ7・5メートル四方のいけすの中では、マサバが元気よく泳いでいた。サバ専門店「SABAR小浜田烏(サバーおばまたがらす)店」の近くにある漁港から船で3〜4分。SABARを展開する「鯖(さば)や」(大阪府)と市、漁協が組んで2016年から養殖している。
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 いけす10基におよそ8千匹。定置網で取った小さなサバを大きく育てる「蓄養」だけでなく、卵から育てる完全養殖も行っている。養殖を担う、鯖や子会社「クラウド漁業」の横山拓也専務(50)は「完全養殖の実績はないので分からないことだらけ。手探りで進めている」と明かす。
 解決策の一つは情報技術(IT)。いけすの水温や塩分、酸素濃度などをデータ化し、最適な餌の量や時間などを導き出す。人の経験や勘に頼っていたのをデータに置き換える試みで、通信大手KDDIや県立大と組んで進めている。
 完全養殖で目指すのはマサバの生食。人工の餌で育てると寄生虫のアニサキスを排除できるので、刺し身での提供が可能となる。
 鯖やの右田孝宣社長(43)は「技術やコストなどハードルは多いが、生食でサバの新たな価値を創造したい。大きなサバが取れない今、天然にすがっていては専門店として生き残れない。育てる漁業への移行が解決策だ」と強調する。
 JR西日本とのタッグで、鳥取県内でも陸上での完全養殖を進めている。近く島根県隠岐の島でも海中での養殖を始める予定。マサバだけでなく、同じ海域に生息する複数の魚種を同時に育てる日本初の「混合養殖」に挑戦するという。
 「全国にサバの養殖を広げる。それぞれの地域ごとに特徴あるブランドをつくっていきたい」―。サバ食普及への意欲は尽きない。
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 太平洋側のサバ産地を悩ませる小型化。水産研究教育機構・中央水産研究所の調査によると、平均体重は12年まで400グラムを超えていたのに、13〜16年は200グラム台で推移し、17年も307グラムにとどまった。八戸でも深刻な加工原料の不足を招いている。
 本来は600グラムを超えてもおかしくない3、4歳でも小さいままのサバを、右田社長は「とっちゃんサバ」と表現。蓄養で大型サイズの確保を図る一方で、200〜400グラムの小型サイズについても新しいメニューの開発を進めている。
 「とっちゃんサバは小さいけど年は取っているので、脂の乗り自体は良くておいしい。小さくても光るサバをどう生かすか。専門店の意地とプライドに懸けて取り組んでいる」
 店頭ではとっちゃんサバの名ではなく「若さば」のブランドで提供。八戸など全国の産地に対して「まず小さいサバにいかに付加価値を付けるか考えるべきだ」とアドバイスを送る。
 「海の環境が変わり、取れる魚がどんどん変わっているのに、やることが同じでは駄目だ」―。自らに言い聞かせるように語った右田社長。専門店にとっては致命的な材料不足の危機を逆手に、新たな道を切り開きつつある。

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