魚種変動の衝撃:第3部 危機を越えて(3)イカ活締め 価値向上(2018/06/10)
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第3部 危機を越えて

 水揚げ魚種の急激な変動に揺れる八戸などの産地。水産業界は危機感を強めるものの、解決への糸口は容易に見えない。第3部では現状打開を図る動きや、今後へのヒントを探る。

(3)イカ活締め 価値向上(2018/06/10)

活締めから約8時間のスルメイカ(右上)とロゴマーク(左上)、泊漁港の小型イカ釣り漁船のコラージュ
 「スルメイカは今年も厳しいだろう。量が取れないなら、1匹当たりの価値を高めるしかない」。六ケ所村泊で小型船による近海イカ釣りを営む三國銀吾さん(37)は力を込める。
 村内の若手漁師10人でつくる「青年漁業経営者協議会」で昨年から取り組むのは「イカの活締め」。昼に釣ったスルメイカを荷さばき施設内の水槽で一晩生かし、翌日に専用器具で神経を切断して活締めする。
 すると、鮮度が損なわれず、こりこりとした食感と鮮やかな表皮の色が保たれる。専用の容器とフィルムでさらに鮮度を長持ちさせ、新幹線で東京などの消費地に運ぶ仕組みだ。スルメイカは24時間、ヤリイカは72時間、高い鮮度を保てるという。
 三國さんは「船に水槽を設置する初期費用はかかるが、長い目で見れば1匹の単価を上げた方がメリットは大きい」と強調する。
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 活締めの技術は、函館頭足類科学研究所の桜井泰憲所長(67)がイカの生殖の研究をする中で、副次的に生み出されたものだ。桜井所長は「神経を切断すると脳から体に情報が伝わらなくなり、鮮度低下のプロセスが遅れる」と、メカニズムを説明する。
 昨年は同協議会と桜井所長が協力し、試験的に東京都内の飲食店や仲買業者に販売した。回収したアンケートでは「産地と変わらない状態で、吸盤も吸い付く感じがあった」「食感、うま味とも申し分ない」などの評価を受けている。
 一方で、課題は価格面や安定的な需要の有無。同協議会の松本光一会長(42)は「一定の量をさばくには、飲食店1店ずつより、卸や仲買を介した方がいい。東京だけでなく青森市の卸業者にも協力を頼み、今年は試験から実用へと段階を進めたい」とする。
 「六ケ所活〆(かつじめ)イカ」のブランドで売り出しを図り、各種イベントで宣伝活動を展開する予定。東京や大阪など大消費地だけでなく、村内のスーパーや産直施設での販売も目指している。
 桜井所長が昨年、富山県魚津港でアオリイカの活締めを指導した際には、近くのスーパーで通常の4倍の値段でも売れたという。
 アジア各国へ翌日に届く国際便「A!Premium」を使い、六ケ所から海外への販路開拓も視野に入れている。
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 三國さんは「泊のイカ釣りが10年、20年後も生き残るためにも、高品質のイカを安定した値段で売る仕組みを作りたい」と訴える。
 若者はどんどん村外に出て、漁業の担い手は減る一方。現在は1隻に付き2人の乗り手も、いつまで確保できるか分からない。1人になれば漁獲はその分だけ減る。少ない数量を高く売るしか手はない。
 活締め以外にも、今年は活イカの首都圏販売も目指す。目先の不漁をしのぐ対策だけでなく、イカ釣り漁業と地域の未来を見据えた挑戦を続けている。

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