魚種変動の衝撃
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第2部 レジーム・シフト

 八戸港を襲った急激な資源変動を引き起こすものは何か。第2部では背景に迫る。

(6)強風だと「イカが減る」(2018/05/11)

スルメイカ増減のメカニズム
 「風が吹けばスルメイカは減る」。イカの生態に詳しい函館頭足類科学研究所の桜井泰憲所長(67)=北海道大名誉教授=が近年のスルメイカ不漁の要因と考えるのは、産卵場となる東シナ海の水温だ。
 八戸、三沢沖など太平洋に来遊する「冬生まれ」のスルメイカが産卵するのは主に1〜3月で、場所は九州から沖縄諸島の西にある東シナ海。ここの上空に2015、16年の冬に記録的な寒気(季節風)が入り込み、水温を低下させた。
 16年冬は鹿児島県の奄美大島で115年ぶりに雪が観測されたほど。桜井所長は「幼生(子ども)の生き残りには適した水温があり、18度以下だと数が大幅に減る」と指摘する。
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 水温低下でイカが減るメカニズムはこうだ―。
 スルメイカは通常、ゼリー状の物質で包んだ20万〜30万個の卵を産む。19・5〜23度の水温だと、海中では表層と下層の間に水温の境目ができており、卵はそこに支えられる形で浮遊する。「まるで海中にぷかぷかと浮かぶ風船のようだ」(桜井所長)
 ところが、強い風で表層が冷えて18度以下になると、上から下まで同じような水温になり、卵を支える温度の境が崩れてしまう。浮かべずに海底に沈んだ卵はゼリー状の物質からむき出しとなって死ぬという。
 「海面が冷やされると産卵に適した場所が縮小する」と桜井所長。季節風の強さの指標としてアリューシャン低気圧の勢力に注目しており、現在、近年の状況を解析中だ。
 スルメイカの寿命は1年で、7年生きるマイワシのように親が何度も産卵するわけではない。資源量はその時々の環境に大きく左右される。親イカは過去3年で3分の1まで減っており、産卵場の環境が戻ったとしても急激な回復は難しい状況に陥っている。
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 イカ、サバ、イワシは八戸港の水揚げ数量の9割を占める三大魚種。それぞれ増減のメカニズムは異なるのに、なぜ14年ごろを境として同時に変動に見舞われたのだろう。
 八戸で繰り広げられる光景は、まさに海の生態系が劇的に変わる「レジーム・シフト」そのものだ。
 中期的な寒暖変動、太平洋10年規模振動(PDO)、地球温暖化、アリューシャン低気圧、黒潮、季節風、餌の競合、捕食、乱獲、震災、外国船の操業…。
 それぞれの魚種変動をつなげる糸がいくつも浮かんだものの、複雑に絡まってほどけずにいる。
 海の異変は謎だらけで、もしかすると始まったばかりかもしれない。変動を前に立ちすくむばかりでは「水産都市・八戸」は沈みかねない。

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