魚種変動の衝撃
デーリー東北

魚種変動の衝撃
第3部 危機を越えて

 水揚げ魚種の急激な変動に揺れる八戸などの産地。水産業界は危機感を強めるものの、解決への糸口は容易に見えない。第3部では現状打開を図る動きや、今後へのヒントを探る。

(6)マイワシで生き残る道(2018/06/14)

熟練の従業員がマイワシを一枚ずつ丁寧に扱うヤイチの工場=八戸市
 「魚体が小さい」「鮮度が落ちやすい」「身がやわらかい」…。加工原料としての短所は枚挙にいとまがないマイワシ。それでも、八戸市内で唯一、40年近くにわたってマイワシの加工で勝負してきた業者がある。“いわし屋”とも称される「ヤイチ」だ。
 「サバと同じで八戸に揚がったマイワシは脂が乗っておいしい。それなのに価値が低い“雑魚”のイメージがある。体にもいいので、1日1匹食べてほしいくらいだ」。三浦泰子代表(59)は訴える。
   ■    ■
 イカとサバの街・八戸で、なぜマイワシを扱ってきたのか―。そこには創業者である父の「イカとサバでは大手業者にかなわない」という判断があった。八戸では“ニッチ”な魚種で生き残る道を選んだ。
 従業員が10人の小さな工場。主力商品はマイワシとタマネギを酢漬けにした「いわしマリネ」で、発売から30年以上のロングセラーだ。創業以来のみりん干しも根強い人気を誇る。
 ただ、水揚げが激減した1990年代半ば以降は、原料の確保に苦しんできた。全く漁獲が途絶えた2年ほどはやむなく千葉産や米国産に手を伸ばした。
 「でも、八戸産とは全然おいしさが違った。他産地のイワシは自信を持って売れる商品ではなかった。脂肪分を調べたら、やはり八戸産の方が高かった」
 苦しい時期にはサバやサンマ、イカにも手を広げながら、決していわし屋の看板は下ろさなかった。マイワシが仕事量の半分を占めてきたという。最近では同業者から「なぜイワシでやっていけるのか」と聞かれることが多くなった。
 三浦代表は「イワシのことをよく知った熟練の従業員が一枚一枚を丁寧に扱っている。とにかく手間が掛かるのでもうけは少ない。大量生産の大手で利益を上げるのは大変かもしれない」と指摘する。
 近年の豊漁については「ありがたい。仕入れ価格も下がって、新商品を開発する余裕が出てきた」と笑顔を見せる。今年になってスペイン料理風の「バジル香るいわしのアヒージョ」を発売。現在も斬新な味付けの新商品の開発を進めており、魚離れが進む若年層の取り込みを狙う。
 戦後の八戸港は優れた加工原料であるイカとサバの大量水揚げに恵まれ、江戸時代から主役を張ってきたマイワシは脇役に追いやられた。今また魚種変動の巡り合わせで、マイワシが脚光を浴びつつある。
 「八戸にイカとサバがないと困る。でも、マイワシだっておいしい。これまで商売をさせてもらった恩返しに、大量に取れ出したイワシの評価を上げる努力をしていきたい」。三浦代表は力を込めた。
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 江戸時代から続く水産都市を何度も襲ってきたであろう魚種の入れ替わり。海洋環境の変動を背景に、数十年ごとに発生するのが分かったのは90年代になってからだ。今回はそれ以降で初の大きな変動となるかもしれない。
 70〜80年代のイカ不漁の逆境は海外漁場の開拓ではね返した。今度はどう切り抜けるか―。今を耐える力とするためにも、魚種変動の衝撃を乗り越えた先に未来を描く時が来ている。
 (連載「魚種変動の衝撃」は今回で終了します。)

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