飛躍への扉 誕生 中核市八戸
デーリー東北

飛躍への扉 誕生 中核市八戸

 八戸市は1日、中核市として新たなスタートを切った。全国で48番目、青森県内では青森市に次いで2番目。県から移譲される保健・衛生、福祉などの権限を生かし、より住民に身近な行政サービスを提供することで、市民福祉の向上や自立的なまちづくりを目指す。さらに3月を目標に、近隣7町村と「連携中枢都市圏」の形成に進む。人口減少社会の中で、主に経済的な視点で地域活力を維持するのが狙い。国が掲げる「地方創生」のモデルとして、北東北を代表する都市の仲間入りを果たすことができるのか。今後の取り組みが注目される。

(下)進化(2017/01/04)

中核市移行で新設された八戸市保健所。移譲された権限を生かす実行力が問われる=2016年12月下旬、八戸市庁
 「連携中枢都市圏は、連携の進化と圏域の活性化に大いに資するもので、8市町村が一丸となって形成する意義は十二分にある」
 2016年3月23日、八戸市のユートリー。八戸圏域定住自立圏を構成する7町村の首長を前に小林眞市長が唱えた。
 異論は出ず、8人はがっちりと握手。八戸を中心市とする「八戸圏域連携中枢都市圏」の枠組みが成立した瞬間だった。
 中枢都市圏を構成するのは三戸、五戸、田子、南部、階上、おいらせの6町と新郷村。かつて八戸市が中核市を目指して広域合併を呼び掛け、物別れに終わった経緯がある。
 時を経て、8市町村は09年に定住自立圏を形成。ドクターカーの運行、路線バスの上限運賃制度の導入などに取り組んできた。その枠組みは、八戸市の中核市の移行を経て、連携中枢都市圏へと発展する。
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 一度は亀裂が入った圏域の市町村が再び歩み寄る背景には、顕著になっている高齢化と人口減少への危機感がある。
 国勢調査によると、8市町村の人口は1995年に35万4千人だったが、05年に34万8千人、15年には32万3千人と、この20年間で8・8%減った。おいらせ町以外の町村部の落ち込みが大きい。
 連携中枢都市圏構想は、人口減少社会の中でも地方が活力を維持できるよう、国が打ち出した。中核市以上の中心市が国の財政支援を受けながら、圏域の経済成長をけん引し、都市機能の集積・強化、生活関連サービスの向上に努める。
 特に経済対策に重きが置かれており、中心市の八戸の役割は大きい。自治体の権限を保ちつつ、地域活性化を図る制度を近隣町村長は好機と捉える。
 三陸復興国立公園の階上岳を抱える階上町の浜谷豊美町長は「観光面で交流人口の拡大を図ることができる。波及効果を期待する。水産業でも連携できるか検討したい」と展望する。
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 全国的には、連携中枢都市圏の構築を目指す過程で、中心市と近隣自治体の温度差が顕在化するケースもある。
 福岡県北九州市は16年3月に5市11町で形成。同市の担当者によると、他の市町から「中心市に都合の良い施策ばかりになるのではないか」との懸念が示された。「圏域の発展が目的で、各市町と相乗効果が図れる連携を模索する」と理解を求め、ようやく合意を取り付けたという。
 「八戸圏域がスムーズに都市圏形成に向かえているのは、丁寧に話し合って定住自立圏に取り組んできたからこそ。各自治体の個性が輝く、魅力ある圏域づくりを目指したい」。八戸市総合政策部の千葉憲志部長は、自治体間の信頼関係を重視しながら事業を進める意向を示す。

(中)ビジョン(2017/01/03)

中核市移行で新設された八戸市保健所。移譲された権限を生かす実行力が問われる=2016年12月下旬、八戸市庁
 中核市移行で青森県から八戸市に移譲された業務の大半を占めるのが、保健衛生と福祉。新設された「八戸市保健所」が担うのは感染症対策や食品・生活衛生など多岐にわたり、市にとって“未知の分野”だ。
 市は移行に当たり、新たに専門職を採用したり、職員の研修を実施したりした。市民サービスの低下を招かないよう、業務を円滑にスタートさせることを重視している。
 一方で、引き続き県が担う業務もある。精神保健分野のうち、市は相談業務を担うが、患者の措置入院などは県の権限。市保健所の西村信夫副所長は「なたで割ったように、きれいに業務を分けることはできない。必要な事案に関しては情報を共有しながら連携する」と強調する。
 全国的に増加の一途をたどる児童虐待。厚生労働省は児童相談所の設置を中核市に促しているが、開設しているのは金沢市と神奈川県横須賀市にとどまる。
 そんな中、2018年に中核市になる兵庫県明石市は、19年4月に設ける方針だ。市子育て支援課の水野賢一課長は「子ども関連の施策を重点的に展開している。明石の子どもは明石で守る」と中核市の責任を掲げる。
 子どもに対する一貫したケアが求められる一方で、財源や専門知識を持った職員の確保・養成は全国的な課題。八戸市も現段階で設置の見通しはない。
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 障害者や母子・父子家庭の中には、悩みを抱えていても行政は敷居が高くて相談しにくい―と感じる人もいるという。
 福祉関連業務でより良いサービスを提供するには、市民相談の間口を広げるのも一つの方策。市内の福祉関係者は「例えば『はっち』など誰もが入りやすい場所で、支援を求めている人が気軽に相談できる機会があれば」と要望する。
 「多様化するニーズに対応するには、行政がNPOなどの民間をより活用していく必要があるのではないか」。「こどもはっち」を運営するNPO法人「はちのへ未来ネット」の平間恵美代表理事は、行政と民間が連携を深める必要性を指摘する。
 「子育て支援について、市としてどのような考えで進むのか、取り組みをもっとPRしてほしい」とも。求めるのは、中核市が目指す明確なビジョンだ。
 「権限を最大限に生かしながら、市民福祉の向上のために全力を尽くしたい」。昨年12月27日に県庁で開かれた中核市移行の引き継ぎ式で、小林眞市長は決意を示した。
 市が県から移譲を受けた業務は2千件以上。市民が必要とするサービスを的確に見極めた上で、権限を生かしながら、地域性を踏まえた独自の施策を展開する力量が問われている。

(上)悲願(2017/01/01)

中核市に移行した八戸市。八戸圏域をリードし、北東北を代表する都市へと飛躍する=2016年12月28日、八戸市長根公園上空から本紙小型無人機で撮影
 八戸市は中核市への移行によって、一段高いステージに進んだ。青森県から移譲された業務は2千件以上。多くの権限を得ると同時に、市民生活を守る責任も大きくなった。
 1995年に施行されてから約20年。政令指定都市に準じる中核市の実現は、長年にわたる悲願だった。
 当初の人口要件は30万人以上。当時は約25万人で、近隣町村との合併によって中核市への移行を模索した。
 2001年に特例市となり、広域合併を呼び掛けた。だが、各自治体の思惑が複雑に絡み合い、協議は不調に終わる。合併にこぎ着けたのは旧南郷村のみ。中核市の要件を満たすことはできなかった。
 広域合併を前提に中核市移行を目指す取り組みは、民間レベルでもあった。
 八戸商工会議所青年部の「合併構想推進委員会」は、各町村を回って討論会を開催。委員長を務めていた北奥設備専務の北向一夫さんによると、前向きな議論を交わしていたという。
 中核市の実現を信じて疑わなかっただけに、「合併構想が崩れ、機運が下火になった時の落胆は大きかった」と振り返る。
 八戸地域の広域合併が破談してから10年後の14年。中核市の人口要件が20万人以上に緩和されると、市は再び大きくかじを切る。
 紆余(うよ)曲折を経ながら、機を捉えてたどり着いた中核市。北向さんは「本当に良かった。感慨深い」としみじみ。「まちづくりが大きく発展するきっかけになれば」と期待を込めた。

青森県の代執行工事が完了した不法投棄現場。中核市移行後は指導・監督権限が八戸市に移る=2016年12月27日、八戸市櫛引
■権限増え責任重く
 「そもそも県がやる仕事は、一般市で行うことが難しい。引き継ぐのは大変な苦労があったと思う」。昨年12月28日の仕事納めの訓示で、八戸市の小林眞市長は移行準備に奔走した職員をねぎらった。
 2014年に中核市の人口要件が20万人以上に引き下げられ、約24万人の広島県呉市と約26万人の長崎県佐世保市が中核市に。両市は自前の保健所を持つ「保健所政令市」だった。新たな人口要件の下で、ゼロから保健所を設置して移行したのは八戸市が初めてだ。
 青森県から移譲された業務の約半分を占めるのは保健所関連。これらに加え、環境保全や民生行政などで初めて担う分野もある。権限が増える一方で、責任は重くなる。
 昨年12月26日、八戸市櫛引地区で、野積みのまま放置されていた産業廃棄物の汚染物質拡散を防ぐ、県の代執行工事が完了した。
 産廃は約10万2千立方メートル。撤去の措置命令を出したが、業者は費用を工面できなかった。工事の総事業費は約8億9千万円で、県の実質負担は約4億5千万円。引き続き業者に支払いを求める方針だが、多額の税金が投入されたのも事実だ。
 中核市になり、産廃業者を指導・監督する権限は県から市に移った。同様の事態が起こらないよう、目を光らせなければならない。
 市環境部の後村勉部長は「不法投棄は手を付けられなくなる前に発見するのが重要。市民の健康と安全を守る重要な業務。パトロールを強化し、責任感を持って監視したい」とする。

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