検証 北海道新幹線 開業から1年
デーリー東北

検証 北海道新幹線 開業から1年

 北海道新幹線新青森―新函館北斗間が開業し、間もなく1年を迎える。観光や経済面などで青森県内にどのような変化をもたらしたのか。現状と課題を探った。

(下)経済波及効果(2017/03/25)

吉田屋が新函館北斗駅内に開設した弁当カフェ「41●(右上に小さい○)ガーデン」。函館進出は企業活動の幅を広げる契機にもなった=14日
 2016年3月26日の北海道新幹線開業では、青森県と道南部が高速交通網でつながったことによる経済波及効果が期待された。県内企業がビジネスを拡大する好機と捉え、函館エリアに進出したケースもある。県全体を巻き込んだ効果は誘発されていないが、青函の結び付きを生かした経済の動きが表れている。
 ■「2年目が大事」
 駅弁製造、販売業「吉田屋」(八戸市)は開業に合わせ、新函館北斗駅内に弁当カフェ「41●(右上に小さい○)ガーデン」をオープンさせた。売り上げは順調に推移し、吉田広城社長は「北海道の観光には大きなパワーがある」と手応えを示す。
 函館進出は活動の幅を広げる契機にもなり、駅弁が全国のスーパーや百貨店で販売されて人気を博した。吉田社長は「青森と北海道という二つのブランドを扱えるようになったのは大きい。首都圏や海外への出店も考えたい」とする一方、「安定的な運営には2年目が大事。新幹線の札幌延伸を見据え、函館で足元を固める」と気を引き締める。
 北海道から青森県に進出した企業もある。函館市を拠点に、全国で19の宿泊施設を展開する「ホテルテトラ」は、八戸市尻内町の旧ホテルオーシタを取得し、16年4月に「ホテルテトラ八戸」を開設し、東北地方の新たな拠点と位置付けた。
 同社はグループのネットワークを生かして八戸をPRし、青函を結び付けた誘客の流れを生み出そうとしている。テトラ八戸の宿泊客の中には、新幹線を利用した観光やビジネス出張で道南部までを移動範囲にする人が見られ、リピーター客も増えているという。
 吉川政見支配人は「新幹線で移動距離や選択肢が増えた利点を生かし、今後は外国人旅行客を含めて函館側から八戸に人を呼び込むことが重要」と指摘する。
 ■恩恵は限定的
 金融機関の連携による、企業の支援や販路拡大の動きも生まれた。青森銀行は北洋銀行(札幌市)とタッグを組み、定期的に商談会を開催。菓子製造業、建設業、クリーニング業の県内3社に融資などを実施し、函館進出を後押しした。
 両行の支援により、道内で人気の炭酸飲料「コアップガラナ」を製造する「小原」(北海道七飯町)と、スーパーの「よこまち」(八戸市)との商談が成立。よこまちストアで商品を取り扱うようになった。
 青森銀行の鈴木淳司地域振興課長は「函館エリアでの営業が増えるなど一定の新幹線効果はあった。今後も青函の経済活性化に向けて取り組みたい」と語る。
 函館、北斗両市に7店舗を構えるみちのく銀行。“函館は地元”という意識で営業活動を展開し、北海道銀行(札幌市)と連携した商談会などを開催する。情報発信やソフト事業にも力を入れ、旅行雑誌「じゃらん」に青函のお勧め観光スポットを掲載したほか、青函の酒蔵と観光地を巡るスタンプラリーを企画した。
 ただ、みちのく銀行地域創生部の菊池正道副部長は「今のところ、目に見えた経済効果は薄い」と話し、新幹線の恩恵はまだ限定的―との見方を示す。
 多方面での青函連携が今後の発展につながるとし、「青函の間で競い合うのではなく、一つのエリアとして首都圏などに売り込んでいくことで経済が活性化するだろう」と強調する。

(中)下北、県南の課題(2017/03/24)

開業効果を得るには地方ならではの観光コンテンツの充実が不可欠だ。写真は(上から時計回りに)「館鼻岸壁の朝市をガイド付きで回るモニターツアー」「観光客でにぎわう十和田湖冬物語の会場」「函館―下北地方間をフェリーで移動する観光客」のコラージュ
 年間500万人近くが訪れる一大観光地・函館市と新幹線でつながった青森県。県内の観光関係者“北”からの新たな観光の流れができることに期待を寄せた。思い描いたのは、函館に宿泊した観光客が帰りに新幹線やフェリーなどを利用して下北や県南地方を訪れる―という構想だ。
 フェリーで函館と約1時間半で結ばれる下北地域。津軽海峡フェリーによると、新幹線が開業した昨年3月26日から今年2月までの大間―函館航路の利用者数は約13万人で、前年同期比13%増となった。
 ■宿泊せず南下
 大間を起点に観光客が訪れる構想通りの形が根付きつつある。ただ、下北地方全体では北海道新幹線の恩恵を享受できていない。しもきたTABIあしすと(旧下北観光協議会)の佐藤淳事務局長は「函館からの日帰りだったり、大間崎周辺で観光した後、宿泊することなく恐山を経由して野辺地、岩手県方面に南下したりする傾向にある」と分析する。
 大半の観光地が素通りされている現状に、津軽海峡フェリーの担当者は「交通インフラ、宿泊施設など観光コンテンツが足りていない。本来なら開業の前年から手を打っておくべきだった」と指摘した。
 あまり変化が感じられない―。八戸市内の旅行業者やホテル関係者の多くも、効果を実感する機会が少ないと受け止める。
 八戸ホテル協議会によると、今年の市内の宿泊客数は昨年とほぼ同じ。下北地方からの観光客が市内に泊まるケースも出てきているが、多くはなく、経済効果を生むまでには至っていない。
 ■足固め
 新青森駅開業時に心配されていたような観光客の減少は、今回もほとんど見られていない。プラスの効果も生まれていないが、八戸観光コンベンション協会の在家秀則専務は「北海道新幹線の開業は、今ある観光資源を磨き、足固めをするきっかけとなった」と強調する。
 協会は本年度から、館鼻岸壁の朝市と銭湯を巡るツアーの見直しや、横丁や湊地区での街歩きについてガイドの育成を進めている。これまで掘り起こしてきた観光資源の魅力を練り直し、まずは現在八戸を訪れている観光客の満足度を高めたい考えだ。
 県を代表する観光地・十和田湖、奥入瀬渓流では受け入れ態勢の充実を図る。2月に開催された冬季観光イベント「十和田湖冬物語」の来場者数は約24万1千人で、前年に比べて約18%伸びた。ただ北海道新幹線開業による効果は見えておらず、十和田市は本年度初めて実施した七戸十和田駅―十和田湖畔休屋間で1日1往復のシャトルバスを運行する取り組みを検証した上で、二次交通の在り方を探っていく考えだ。
 十和田湖国立公園協会の太田勝男総務課長は「新幹線の恩恵を受けるには二次交通の充実が不可欠。通年の交通整備をして、受け入れ態勢を強化しなければならない」と話した。

(上)新駅開業の今別(2017/03/23)

開業1年を迎えた奥津軽いまべつ駅。開業効果の一方、2次交通充実などの課題も残る=15日、今別町
 ■17万人
 「今別町の海産物を買い求める人が多い。想像以上にお客さんに来てもらっている」。北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅(今別町)に隣接する道の駅いまべつ「半島ぷらざアスクル」の山田基駅長は、新幹線開業後の店のにぎわいに手応えを語る。
 開業約1年前の2015年4月にリニューアル。町直営で土産物のほか、ソイやウミタナゴなどの鮮魚もそろえる。レストランでは町で育った「いまべつ牛」のステーキなどが人気を集め、開業後の16年度(2月末現在)の来場者は約17万3千人と、既に15年度の約12万5千人を大きく上回る。
 「新幹線効果は着実に出ている。お客さんをつなぎ止めるため、さまざまな工夫を凝らしていかなければ」と山田駅長は力を込める。
 北海道新幹線の開業で県内で唯一、新駅が設置された今別町。「新幹線駅のある日本で一番小さい町」は少子高齢化が急速に進む中、新幹線を地域活性化につなげるよう取り組みを強化してきた。
 町内の高校生が同駅を利用して町外の高校に通学する場合、定期代の3分の1を助成する全国でも珍しい制度を導入。開業前は青森市で下宿などをしなければならなかったが、「新幹線開通で通学の幅が広がった」と町企画課の太田和泉総括主幹。制度を使って市内の高校に通学する生徒は2人だけだが、「若者流出への歯止めと保護者の負担減につながっている」と強調する。
 JR北海道によると、16年3月26日の開業から17年2月末時点の新青森―新函館北斗間の乗車実績は1日平均6500人。前年の特急列車と比べて利用者は約1・7倍に増加した。平均乗車数を基に本紙が集計したところ合計約220万人が利用。平均乗車率は33%と、開業前にJRが想定した26%を上回っている。
 開業前に心配された運行面では大きなトラブルはなく、定時運転率は97%。JR北海道函館支社の綿貫泰之支社長は「安全輸送に向け、今後も(空気で線路の雪を飛ばす)エアジェットなど必要な設備を増強していく」と語る。
 ■PR不足
 課題もある。2次交通拡充を目的に運行されている同駅と津軽鉄道の津軽中里駅(中泊町)を結ぶバスの利用者が伸び悩んでいる点だ。
 バスは今別町や五所川原市、中泊町などでつくる運行協議会が弘南バス(弘前市)に委託し、16年3月26日から1日4往復している。1便当たり4人の利用を見込むも、1月末現在で想定を大きくした回る0・89人。当初から1800万円の赤字が予想されたが、最終的にはそれを大きく上回る3千万円の赤字となる見込みだ。赤字は県が半額、残りを3市町が負担。2年目以降は国の補助金も活用し、運行を続ける。
 協議会は利用が低調な理由として「PR不足」を挙げる。今後は道南地域を中心にチラシやポスターなどで周知を図り、2年目以降の利用促進につなげたい考えだ。
 観光客の利便性を考慮すれば、採算面だけで評価はできないが、利用拡大につなげる不断の取り組みが欠かせない。

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