減りゆく学び舎 〜青森県立高校再編〜
デーリー東北

減りゆく学び舎
〜青森県立高校再編〜

 青森県教委は県立高校再編の第1期計画案で、13校を閉校し、4校を新設する方針を示した。地域への影響や再編の必要性、今後の行方を探る。

【今後の行方】「地域校」にも危機感 (2017/05/12)

再編計画案で存続が決まった学校でも入学者の減少傾向が続いており、関係者は危機感を募らせる=県立三戸高
 今回の再編計画案では、通学環境を考慮し、学級規模の標準を満たしていなくても存続させる「地域校」として、県南地方から田子、六ケ所、大間の3校が選ばれた。ただ、田子町の関係者は「現段階で存続は決まったが、喜んでいられる状況ではない」と表情を曇らせる。
 危機感を示すのは、地域校にも「存続条件」があるからだ。
 県教委は▽1学年2学級の学校は、2年連続で入学者が40人を割ると、学級数を1に減らす▽1学級の学校は、2年連続で入学者数が募集人員の半分に満たなかった場合、募集停止などの検討を始める―としており、入学者数が少ないままでは存続が危ぶまれる。
 通学が困難で地域校に選ばれているのに、将来的に学校がなくなるかもしれない―。
 そもそも生まれてくる子どもが少なく、生徒数の自然減が避けられない中での条件付き存続方針に、中学生の子どもを持つ郡部の保護者は「地域間で学校配置のバランスを考えてほしい」と切に訴える。
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 現在、1学年1学級の田子高。ここ数年の志願者は募集人員の半分に達していない。田子町の宇藤裕夫教育長は「努力の余地が残されているが、現状を見ると何とも言えない」と思うように進まない生徒数確保に焦燥感を募らせる。
 「計画の第2期(2023〜27年度)に向け、三戸郡内は状況を見ていく必要がある」。4月26日の計画案公表後に行われた会見で、県教委の中村充教育長は郡内の高校が次回の計画で統廃合の対象になる可能性を示唆した。
 同じ郡内の三戸高は今回の再編で学級数が減り、1学級へと規模が縮小される。同校は過去2年の入試で志願者が40人を超えているが、県教委は県立高校の標準となる学級規模を「4学級以上」としており、予断を許さない状況だ。
 田子高と同じく地域校に選ばれた大間高は、地元の大間町と風間浦、佐井両村から多くの生徒が通う。公共交通機関が脆弱(ぜいじゃく)な地域で、むつ市内の高校に通学するのは難しく、八戸市や青森市の高校に進学し、下宿する生徒もいる。
 3町村は少子化の進行が速い。大間高の入学者数が減り、将来的に同校が統合の対象になった場合、数少ない若者の流出に拍車が掛かるのは明白だ。
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 子どもの数が比較的多い市部と少ない郡部。「教育環境の充実」を掲げながら、再編によって通学困難な地区が生じ、平等な教育機会を確保できなくなれば、当初の目標に沿っているとは言えない―との指摘もある。
 大間高に進学する生徒が多い大間中の伊藤一章PTA会長は言う。「入学者が減れば、地域校も今後、統廃合の対象になるかもしれない。高校がなくなることで、子どもたちの可能性をつぶすことにもなりかねない。それは本当の教育と言えるのか」

【必要性】生徒急減、維持困難に (2017/05/11)

県内の中学校卒業予定者数の推移(見込み)
 青森県立高校13校の大規模な統廃合が示された第1期計画案(2018〜22年度)。生徒急減期≠迎え、これまでの学科や学校の配置が困難になることが再編の背景にある。
 「中学の卒業予定者数が相当数減る。特に第1期は急減期。その中で小規模の学校をたくさん用意しても、教育環境の充実にはつながらないという議論がこれまでなされてきた」
 第1期計画案が公表された4月26日。会見した中村充県教育長は、従来の教育環境維持への危機感をにじませつつ、時代の変化に対応して教育の質を高めていく必要性を強調した。
 県内の中学校卒業予定者数は、第1期の期間中に約2200人の減少が見込まれ、募集学級は現在の230から189〜195学級に減る見込み。さらに第2期(23〜27年度)まで10年間を見通せば、約3100人の減少が予想される。
 県教委の担当者は「生徒数の減少に学級減だけで対応したら、全ての高校が小規模化してしまう」と再編に理解を求める。
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 県南地方で、第1期中に減少が見込まれる中学校卒業予定者数は、三八地区418人、上北地区391人、下北地区111人。募集学級数の減少は、三八地区5〜6学級、上北地区9〜10学級、下北地区3〜4学級が予測される。
 県内6地区のうち、学級数の減少が最も多い上北地区では、三本木農業高と十和田西高、六戸高を統合し、新設校とする案が示された。校舎を引き継ぐ三本木農業高を農業科の「拠点校」とし、普通科と組み合わせて教育内容に広がりを持たせることで、多様な進路選択の充実を図る。
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 人口が減少する郡部にある高校の統廃合が目立つ今回の再編。青森中央学院大(青森市)の竹中司郎准教授は「統廃合によって町や村の活性化はそがれてしまうだろう」と地域の実情を気に掛ける。再編に伴う課題として「授業レベルの標準をどこに合わせるかが今後の課題だろう。いままで以上に学校側の責任は重くなる」と指摘する。
 一方、再編に伴うスケールメリット≠烽る。教員の多忙化が問題視される教育現場。県教委が14年6〜7月に実施した勤務実態調査によると、高校教諭・講師の校内での時間外勤務は、1日当たり平均2時間17分に及ぶ。
 実際、八戸市の高校で勤務経験のある元教諭は「小規模校の中には、全学年の授業を受け持つ先生もいる。生徒全体に目が届くともいえるが、負担は大きいだろう」と語る。
 学校規模の維持について「教える側に余裕が生まれ、授業の質をより高められる」と強調する竹中准教授。「中学卒業を機に規模の大きい高校へ通うことは、これまでの限られた人間関係から、広く深い人的交流へ踏み出すきっかけにもなる」との見方を示す。

【影 響】「地域の破壊につながる」 (2017/05/10)

五戸町内の施設でシソの実の収穫を手伝う五戸高生。郡部の高校が減ることで地域活力の衰退が懸念される=2016年9月
 「高校のない地域に住みたいと思いますか」
 4月26日に青森県教委が公表した県立高校再編の第1期計画案(2018〜22年度)。再編の対象候補となった五戸高関係者の男性は憤りをあらわにした。
 高校がなくなる地域では生徒や保護者の経済的、時間的な負担増が避けられない。地域の拠点の一つが失われることで活力がそがれる可能性もある。
 元々、郡部の高校では、町内の祭りやボランティア活動などに積極的に参加する生徒が多く、地域社会とのつながりが強い。
 少子高齢化の傾向が顕著で学校数が少ない郡部において、一つの公立高校の存在は市部に比べて大きく、統合に対して反発が出るのは当然とも言える。
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 県教委は三八地区で五戸高と八戸西高、上北地区では六戸高、十和田西高、三本木農業高を統合する案を示した。校舎は八戸西高と三本木農業高を使用するとしており、実質的には五戸と六戸、十和田西が吸収≠ウれる形だ。
 これまで「県立高校教育改革第3次実施計画」(2009〜17年度)などでも統廃合は行われてきたが、18年度からの5年間で9校が減る今回の再編規模は過去最大。校舎が使用されなくなる対象候補の多くが郡部に所在する。
 「町の振興から考えても大きな損失だ」と指摘するのは五戸町の三浦正名町長。
 五戸高の生徒は、五戸まつりの山車制作や地元のイベントなどに積極的に参加。六戸高も冬場、野球部を中心に町内の高齢者宅の雪かきを手伝うなど、住民にとっては欠かせない存在となっている。
 地域が頼りにする地元の生徒≠ェいなくなることに、三浦町長は「小中学校の統廃合とは意味が違う」と訴え「徹底抗戦する」と強硬な反対姿勢を見せる。
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 五戸高が統合されることで影響を受けるのは五戸町だけではない。毎年数人ながら、隣接する新郷村内の中学校から五戸高に進学する生徒もいる。同村の須藤良美村長は「五戸高がなくなり、八戸に移り住む人が出れば、人口減少が加速し地域の破壊につながる」と危機感を募らせ、「学級を少なくしても高校を残すべきだ」と主張する。
 「創立100年を迎える日を夢見ていた」。五戸高PTAOB会の男性が語るように、地域住民は頭では「生徒が少ないから仕方がない」と分かっていても、それだけでは割り切れない思いを抱える。
 この男性は「八戸西高がなくなれば良いとは思わない」と前置きした上で、「歴史などを考えれば、五戸高に統合する考えもあったのではないか」と郡部から学び舎(や)≠ェ減っていく現状を憂えた。

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