グッドデザイン賞受賞&新キャラクター誕生記念 新聞トーキングカフェ

新聞トーキングカフェ開催

地方紙の未来 議論熱く

 デーリー東北新聞社は12日、八戸市の本社で地方紙の未来を考えるトークイベント「新聞トーキングカフェ」を開いた。2017年度のグッドデザイン賞を受賞した経済特集「エコノミック・マンデー(EM)」、新キャラクター「デリオン」の紹介に続き、各分野で活躍する4人を招いたパネルディスカッションを実施。「もし、新聞が明日からなくなったら…」のテーマで、パネリストらが新聞を取り巻く現状や役割について意見を交わし、今後の在り方を提言した。
【写真説明】
パネルディスカッションなどを通じ、地方紙の在り方を考えた「新聞トーキングカフェ」=12日、八戸市のデーリー東北新聞社6階メディアホール
パネリスト
金入 健雄 氏
かねいり・たけお
 都内の文具専門店勤務を経て2008年に金入に入社、13年から代表を務める。青森県内と盛岡市、仙台市などで9店舗を展開。文具・書籍販売にとどまらず、東北の工芸品に関するコンテンツ制作に尽力。八戸市出身。37歳。
パネリスト
玉樹 真一郎 氏
たまき・しんいちろう
 八戸学院大学長補佐。任天堂に入社後、全世界で9500万台を売り上げたゲーム機「Wii」の企画・開発に深く携わる。2010年に同社を退職し、八戸市に「わかる事務所」を開設。16年から現職。同市出身。40歳。
パネリスト
平間 恵美 氏
ひらま・えみ
 NPO法人「はちのへ未来ネット」代表。八戸市の「はっち」4階で、子育て支援施設「こどもはっち」を運営する。子どもの健全育成に寄与したとして、2015年度には内閣府特命担当大臣表彰を受ける。仙台市出身。57歳。
パネリスト
石橋 春海 氏
いしばし・はるみ
 デーリー東北文化面で「続おらホが主役だ!」を連載中のフリーライター。写真誌を中心とした取材記者や、ビデオジャーナリストとして活躍。ライターとして「伝説の昭和特撮ヒーロー」など著書多数。八戸市出身、横浜市在住。65歳。
コーディネーター
関橋 英作 氏
せきはし・えいさく
 クリエーティブ戦略家。外資系広告代理店などでコピーライターとして活躍し、チョコレート菓子「キットカット」、アイスクリーム「ハーゲンダッツ」などを有名ブランドに導いた実績を持つ。八戸市出身。東京都在住。68歳。
コメンテーター
荒瀬 潔 社長
あらせ・きよし
 1976年、デーリー東北新聞社に入社。本社や東京支社などで社会、政治、経済など幅広い分野を取材し、取締役編集局長、同青森支社長、同販売・事業局長、常務取締役を経て2013年から現職。八戸市出身。67歳。

地域に根差し、価値向上

ネット、新聞の価値代用 金入氏

―なぜ新聞は読まれなくなったのか。

関橋
 この10年間で、国内の新聞発行部数は約1千万部減った。新聞大国と呼ばれている日本にも、危機的な波は迫っている。
金入
 インターネットや会員制交流サイト(SNS)の情報で、新聞の価値を代用できる部分が増えてきた。そういうところが新聞を読まなくなってきた人が増えてきた理由かもしれない。ただ、新聞にはネットなどでは補えない情報もたくさん載っている。
玉樹
 常に手元にあるので、「スマホで情報を得る方が便利でしょ」と思っている人が多いのでは。新聞には「紙」という物質が伴い、情報化社会の中では少し不便な部分もある。
平間
 今も昔も若者は新聞を読む人が少なかったのでは。ただ、今はスマホを使っていると、次々とニュースが入ってくる。タイトルだけを読んで内容を理解した気分になり、新聞を読まない人が増えたのではないか。自分で動かなくても、どんどん情報が入ってくる世の中になったと感じる。
石橋
 週刊誌に比べると、新聞は事件報道などで(関係者を)匿名にすることがあり、情報量が少ない。今の時代、フェイクニュースもあるが、ネットには情報があふれている。新聞社は記事掲載の際にさまざまな制約があるのは知っているが、匿名報道など肝心な情報が少ないままでは、いずれネットに負けてしまうだろう。

弱者に頼られる新聞を 平間氏

―それぞれが思うジャーナリズムとは。

金入
 ネットやSNSが発達し、フィクションとノンフィクションの境目が曖昧になってきた。何が本当のことなのか分かりにくくなっている。どの記者が何を取材し、何を書くのか、責任を持って報道しているのが新聞の価値。それがジャーナリズムの本質なのではないかと思う。
玉樹
 今は昔と比べて新聞を取り巻く環境も変わったが、新聞社は本当に危機感を持っているのか。言ってしまえば、ジャーナリズムという言葉自体が既に古いものだ。「巨悪に立ち向かう」という姿勢だけでなく、もっと暮らしに大切なことを伝えてほしい。
平間
 ジャーナリズムには正義を求めたい。弱い立場にある人の意見は届きにくいものだ。弱い人が何かを求める時に頼れる新聞であってほしいし、新聞がなくなると、そういう立場の人の声を代弁してくれる機関がなくなってしまう。記者はそういう熱さを持って取材してほしい。それが活字になった時に読者に思いが伝わるものだと思う。
石橋
 新聞にはまだ少しジャーナリズムが残っていて、一番信頼できるメディアではないだろうか。(ネット上の百科事典である)ウィキペディアなどでも、新聞が出典元として使われることがある。紙の新聞はなくなるかもしれないが、(紙からネットなどに)形態が変わっても、新聞というものは残っていくだろう。

紙の記録、将来再評価も 石橋氏

―もし新聞がなくなったら。

平間
 すぐに困ることはないかもしれないが、世の中がぐちゃぐちゃになる。行政のやっていることは本当に良いことなのか、社会への問い掛けがなくなる。正しいことを判断するのが難しくなる。
玉樹
 紙の新聞と新聞社による取材機能は、区別して考えなければならない。いわゆる新聞紙はどうなるか分からないが、取材機能は絶対に必要だ。
石橋
 将来的に9割がデジタルになるだろう。ただ、電子的な記録は何かの瞬間に全て消えてしまう恐れがあり、紙もないと駄目。記録媒体として優れている。いつか「紙の新聞もいいよね」と、復刻されるような時代が来るかもしれない。

暮らしに近い情報大切 関橋氏

―デーリー東北はどうあるべきか。

玉樹
 地方紙なのだから、もっと自由でいい。店頭などに並ぶ新聞は、どれも同じで見分けがつかない。見た瞬間にデーリー東北だと分かるぐらいでいい。堅苦しい話ではなく、暮らしに密着した楽しいコンテンツを増やしていけばどうか。
金入
 この地域にこだわりながら、この地域にとどまらない、これからの生き方の指針になる情報発信に期待したい。言うなれば、「華麗なるローカルスタンダードの確立」だ。県境などにとらわれない、われわれが暮らす地域に根付いた情報の価値はさらに高まってくる。エコノミック・マンデーもそう。テーマは経済だが、自分の暮らしに目線を置いている。この地域で暮らす人の指標となるような役割を果たし、もっと分析、提言してほしい。
関橋
 同感だ。日々の暮らしに近い情報こそが大事。一番求められている情報が明快になれば、そういう紙面構成になっていく。新聞紙という形は変化するかもしれないが、ローカル紙が個性を持ってやり始めたら面白い。
荒瀬
 新聞は記者の主観を入れずに客観報道主義でやってきたが、若い人たちは常識的過ぎる記事に満足できなくなってきた。客観をどこまで捨て、主観をどう発信できるか、瀬戸際に来ている。ニュースを発信する際の立ち位置で取材、報道の仕方は変わる。立ち位置をはっきりさせれば、おのずと他社との差別化が図られていくと思う。多様性を持った取材、報道活動が必要だろう。

読者の共感呼ぶ紙面に 玉樹氏

―今後、期待することは。

石橋
 もっと面白いことをやってみては。かなり批判もあると思うが、東京新聞はエイプリルフールに、うそのニュースを載せている。エンターテインメントを提供し、もっと“攻めた”新聞になってほしい。
玉樹
 実は新聞を最初から最後まで、全てのページを読んだことは一度もない。まだまだ字が多く難しい。そういう意味では、エコノミックマンデーのように、地方紙は読者にもっと優しくてもいいという気もする。そうすれば客観や主観のさらに上、読者の共感を呼ぶレベルまで行ける。地域のみんなと同じことを考えている新聞になれる。
荒瀬
 米国の地方紙が廃刊になった地域で、知らない間に議員報酬が大統領を上回るほど高額になっていたのに誰も気付かない―ということがあった。報道機関が消えると、おかしなことが起きるという例だ。
 皆さまから心強い言葉を頂いた。われわれはそうした権力の監視役としての自覚を持ち続けながら、地域の皆さんともっと近づきたい。顔が見える、息遣いが聞こえる紙面を作れば、まだまだやっていけると信じている。株式会社なのでお金も稼がなければならないのだが、一番は地域の役に立つことをする会社として生きていきたい。

プログラム

開催日

1月12日(金)

時 間

15:00〜17:00
15:00〜
社長あいさつ
エコノミック・マンデーの紹介
新キャラクター紹介
15:30〜17:00
新聞トーキングカフェ
テーマ「もし、新聞が明日からなくなったら・・・」

場 所

デーリー東北新聞社6階メディアホール

参加費

無料

主 催

デーリー東北新聞社

コーディネーター

関橋 英作

ハーゲンダッツ、キットカットなど数多くをトップブランドに導き、カンヌ国際広告賞メディア部門グランプリをはじめ、多くを受賞している八戸市出身クリエイティブ戦略家

パネリスト

金入 健雄

書籍、文具の専門店並びに豊かな生活を提案し文化とビジネスの両面で地域をけん引している株式会社金入代表取締役社長

玉樹 真一郎

任天堂の大ヒット商品「Wii」を企画開発。現在は誰かのためになるビジネスについて講義する八戸学院大学学長補佐

平間 恵美

「子どもと親が希望と安心感を持って幸せに暮らせる地域作り」を目指す、はちのへ未来ネット、こどもはっち代表

石橋 春海

八戸市出身、横浜市在住。「封印歌謡大全」等執筆多数。当社「おらホが主役だ!南部愛こそすべて〜」を連載中のフリーライター

コメンテーター

デーリー東北新聞社社長 荒瀬 潔